巻頭言
精神医学における疫学研究
朝田 隆
1
1筑波大学臨床医学系精神医学
pp.932-933
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902699
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一昔前イギリスに留学した折に,特に印象に残ったもののひとつが疫学重視の研究姿勢である。イギリスや北欧から発行される精神医学のジャーナルをご覧になれば,このことは居ながらにして納得できるはずである。もっとも分子生物学が全盛期を迎えつつある現状では,疫学などは「なんとも古臭い」という感を持たれる方も少なくなかろう。
さてこれまで日本の精神医学界では,疫学研究が盛んであったとは言えないようだ。その理由として,これに要する心身の労力が莫大であるということが何より問題なのだろう。また疫学調査の精髄は,その結果がある地域の実態を真に反映しているか否かにある。ところが精神疾患を対象とする調査では,欧米であっても住民の協力が得難く参加率が低いとされる。それなら日本ではなおさら難しかろうと思ってきた。
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