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はじめに
筆者は精神分裂病の症状の神経心理学的検討に関心をもってきた。分裂病の症状を脳機能との関連で検討することで,症状の形成に関する何らかのヒントが得られないかと考えてきた。脳損傷による高次脳機能の障害に対しては,近年,認知リハビリテーションの名のもとに症状解析に基づいた症状の代償方略をはじめとするさまざまな治療の試みがなされるようになっているが,分裂病においても,神経心理学的なアプローチにより,症状を検討し,それらに対する対処方略などを何とか考えることができないかと思っている。以前,分裂病と前頭葉損傷を比較,検討したことがあるが,神経心理学的には両者の症状は似ているが,やはり異なるという当たり前の結果が得られただけであった3)。前頭葉損傷との対比では分裂病の陰性症状が対象であり,診断において特異性の高い陽性症状は対象としえなかった。
しかるに,最近共同研究者の前田が視知覚の体制化を検証する目的で,グラフィック・ロールシャッハテストの改変を試み,限局性脳損傷や分裂病の視知覚に関する予備的な検討をはじめている7〜11)。グラフィック・ロールシャッハテストはすでに1943年にGrassiら2)により試みられており,最近では田形15)も検討を行っているが,改変したグラフィック・ロールシャッハテストでは視知覚の体制化を神経心理学的により詳細に検討しうるよう,検査法・評価法に工夫がなされている。本グラフィック・ロールシャッハテストは後述するように,視知覚の体制化をbottom up organizationとtop down organizationの両面,つまり視覚刺激という“外界”と思考,意味,表象といった“内界”の両面から検証することを目的に作成されたものである。
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