動き
「第24回日本神経心理学会」印象記
三村 將
1
1昭和大学医学部精神医学教室
pp.225
発行日 2001年2月15日
Published Date 2001/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902382
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第24回日本神経心理学会総会は,浅井昌弘会長(慶應義塾大学医学部精神神経科教授)のもとで,2000年9月7,8日の2日間,東京の笹川記念会館において開催された。精神医学的観点から神経心理学領域の諸問題ヘアプローチを試みようとする浅井会長の意図を反映して,会長講演は「感情とその病態の神経心理学序論」であり,また関連して山鳥重教授の司会のもとで「情動の神経心理学」と題したシンポジウムが行われた。シンポジストは玉井顕(post-stroke depression),波多野和夫(情動と辺縁系),平山和美(視床と情動),渡邊正孝(動機づけ情報の処理と前頭連合野),加藤元一郎(前頭葉と情動)の諸氏であった。感情ないし情動は従来の神経心理学では比較的敬遠されがちであったが,近年では今回シンポジウムでも取り上げられたように,辺縁系・前頭葉・視床といった,その脳基盤が解明されるにつれ,一種のホットトピックになっている。その意味で会長講演もシンポジウムも非常に興味深い内容であったが,一方でまだ立場や考え方によって感情・情動をどうとらえるかが大きく異なっており,問題の難しさを改めて痛感することにもなった。
教育講演は富山医科薬科大学医学部精神神経医学教室の倉知正佳教授による「精神分裂病の神経心理学」であった。この問題も精神科領域ではきわめて大きなテーマであるが,倉知氏は豊富な臨床経験と症状分析,緻密な神経生化学的・神経放射線学的研究に裏付けられた「他者化症候群alienation syndrome」や「フレーム・ドーパミン仮説」,「社会性関連回路」などユニークな精神分裂病論を展開した。
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