動き
「第24回日本精神病理学会」印象記
津田 均
1
1東京大学医学部精神神経科
pp.1382-1383
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902555
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日本精神病理学会第24回大会は,2001年10月3,4日,高橋俊彦会長のもと,名古屋大学豊田講堂を中心とする3会場において開催された。精神病理学は,長い伝統を持つ精神医学の基礎学として存続しているが,昨今では,これを精神科医のたしなみとして踏まえておく必要性さえ軽視する風潮がないとは言えない。そのような中,本大会は,この学自体が将来に向けて持つポテンシャルを十分に示すものであったように思う。
特別講演は,今年理事長を勇退される木村敏氏(河合文化研究所)が担当された。氏は,有機体と環境世界との間の界面現象としての主体と,死と等根源的な絶対的他性に絶えずさし向けられている自己とを論じ,人間は種としての集団的な生物であると同時に個別な存在でもあるためにこの両者の間の調整をつけるという困難な課題を負わされており,分裂病の成因もそこにあるという練り上げられた持論を展開した。氏はまた,クオリア(経験の主観的な質)の概念に触れて分析哲学への新たな接近を示したが,それとの関連で40年前の氏の離人症論における「自己クオリティー自己という主観的な質感」に言及され,氏の思索の息の長さを印象づけた。
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