巻頭言
産業保健スタッフと精神科専門医との連携
中村 純
1
1産業医科大学精神医学教室
pp.560-561
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902229
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労働者のこころの健康問題(メンタルヘルス)への対策に関心が高まっている。ILOも仕事上のストレスを職場における最も重要な健康阻害要因の1つと位置づけている。仕事上のストレスに起因する疾患としては,精神疾患以外に循環器疾患,消化器疾患,筋骨格系疾患,事故などが挙げられるが,本人はもとより労働の場における管理者,上司,同僚など本人を取り巻く人々の対応や社会復帰に関する問題は,他の障害とは比較できないほどの困難性を有している。
我が国ではこの数年不況が続いており,倒産やリストラによる失業者が増加している。そして,雇用不安時代が生みだす悲劇の連鎖の中でも,最悪の結末は間違いなく自殺である。1998年度の自殺者数は過去最高の32,863人であり,前年に比べて実に8,472人も増加した(前年度比35%増)。しかも50歳代の男性の自殺者が最も多い。これは失業率が3.6%から4.6%に上昇したことと関連があるともいう。年末に交通事故による死者が1万人を超えるかどうか毎年話題になるが,自殺者の増加はこれをはるかに超えており,その対策は重要な課題である。なかでも就業者の自殺数は年間1万数千人で,そのおよそ70%はうつ病・うつ状態と推定されている。労働者の1%以上(およそ66万人)が国際疾病分類による「精神および行動の障害」を有し,精神障害による長期休業者は全労働者の0.2%から0.4%と推定されており,ほとんどの事業所において長期休業理由の第1位となっているのが現状である。
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