巻頭言
産業精神保健へのお誘い
島 悟
1
1東京経済大学経営学部
pp.4-5
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100613
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巻頭言の欄にご依頼をいただくほどの研究業績も臨床実績もないのではなはだ当惑している。またすでにそういう年になったのかという感慨も抱いている。折角いただいた機会なので,関心を抱いている「産業精神保健」に関して所感を述べさせていただくことにしたい。
振り返ってみれば,内科臨床から始めて,精神科臨床,学校精神保健,母子精神保健,高齢者精神保健,障害児施設,矯正施設,産業精神保健などの分野にかかわってきたが,最も関心を抱いている領域は母子精神保健である。その理由は,そもそもこうした事柄に優先順位をつけること自体が本来的に相応しくないことかもしれないが,母子精神保健はあらゆる精神保健の基礎にあり,世代間連鎖の観点からも,最重要分野であると考えているからである。しかしながら,母子精神保健を支える上で,労働者がよい健康状態で,仕事がいを持って労働することが重要であるので,産業精神保健は同等に非常に重要な分野であると考えている。とりわけ昨今の中高年勤労者の過労自殺増加といった現代の悲劇を少しでも減らすためには,産業精神医療体制の強化は焦眉の課題であろう。
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