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私の臨床研究45年
生物-心理-社会的統合モデルとチーム精神医療(第3回)—うつ病の精神力動と家族病理
Bio-Psycho-Social Integrated Model and Psychiatric Team Treatment: My Clinical Research 45 Years : Psychodynamics and family-pathology of depressive patients
西園 昌久
1,2
Masahisa NISHIZONO
1,2
1心理社会的精神医学研究所
2福岡大学
1Institute for Psychosocial Psychiatry and Psychoanalysis
pp.311-315
発行日 2000年3月15日
Published Date 2000/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902186
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対象に貧欲にしがみつく傾向―執着性格の精神分析的見直し2)
1960年前後まで,私どもの大学精神科を受診してくるうつ病患者はそれほどには多くなかった。当時,私が在籍していた九州大学を例にとっても,その記録によると1年間の外来新患総数の中で,うつ病と診断されたのは,1960年2.3%,1965年6.2%,1970年8.2%と増加しているが初めは少なかった。昨年まで勤めていた福岡大学では,この10年近くは20%後半の頻度であった。1960年以前のうつ病は数も少なかったが,同時に,いわゆる内因性の特徴を持ったものが多く,それに時々,心因反応性のものをみることがあった。いわゆる神経症性うつ状態は少なく,当時のICD-8分類(WHO)に採用されたこの概念が妥当かどうか議論のあるところであった。それでもその後のICD-9にも「神経症性うつ状態」は独立した単位として掲げられた。それをアメリカ精神医学会のDSM-IIIでは,神経症という分類そのものを破棄して「大うつ病」としたのは周知の通りである。そのような「大うつ病」も患者によっては,一方の極に従来の内因性うつ病の特徴が,他方の極に神経症性うつ状態の特徴がみられ,残りの大多数は双方に分けがたい特徴が混在している。しかも,その後の鰻のぼりの受診患者の増加は社会や価値観の変化のために対象喪失体験の機会が多く,そのために発症した不適応型うつ病によるものである。うつ病は生物-心理-社会的に病因と治療を考えるべき典型的な病態であろう。
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