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はじめに
統合失調症の治療に抗精神病薬が使用されるようになった1950年代以降すぐに,その副作用として錐体外路症状(Extrapyramidal Symptoms:EPS)が臨床上の問題となってきた。1990年代に入ってからは錐体外路症状の出現が少ないとされる第2世代抗精神病薬(Second Generation Antipsychotics:SGA)が広く使用されるようになったが,SGAも第1世代抗精神病薬と同様に,中枢ドパミン受容体を遮断するという共通の基礎薬理学的機序を多かれ少なかれ有していることから,依然としてEPSに脆弱性のある患者に対しては,抗精神病薬療法における大きな臨床上の問題となっている。
EPSは抗精神病薬の投与初期にみられる急性期EPS(パーキンソニズム,アカシジア,ジストニア)と,遅発性に出現することが多いジスキネジアに大別される。急性期EPSは患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を押し下げて,しばしば服薬アドヒアランスの低下をもたらすことがあるため,急性期EPSを早期に把握し,適切な処置を行うことは,精神科薬物療法上きわめて重要なことである。また,抗精神病薬の長期投与後にみられる遅発性ジスキネジア(TD)に対しては2022年に治療薬が承認されたものの,投与初期から適切な抗精神病薬療法を行うことによる予防の重要性が強調されており,TDの危険因子である急性EPSの発現を軽症の段階から把握し,注意深い抗精神病薬療法を行うことの重要性が指摘されている。
本総説では,医薬品誘発性運動症群の重症度を評価する尺度として,薬原性錐体外路症状評価尺度(Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale:DIEPSS)1〜6)と,薬原性EPSのなかでも特にTDに焦点を当てた異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale:AIMS)3, 6)について,それらの評価尺度の概要や活用方法,使用上の留意点などについて述べる。
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