特集 子どものうつ病に気づく
特集にあたって
稲垣 貴彦
1,2
,
栗山 健一
2,3
1医療法人明和会琵琶湖病院思春期青年治療部
2滋賀医科大学精神医学講座
3国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部
pp.971-972
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207026
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現代において,うつ病はあらゆる年代における精神健康上の重大な疾病負荷であることが共通認識となりつつある。伝統的な臨床医学においては,うつ病は成人期,特に中年期以降に有病率が増加することが,共通認識とされてきた。有病率を見積もるための疫学調査や臨床研究のデータも,こうした認識を裏付ける一方で,なぜ成人期以降にうつ病が増加するのかを説明づける生物学的な証拠はきわめて乏しい。古典的な精神病理学および社会心理学的考察の多くは,一定の心理的成熟とともに,身体的老化(衰え),社会的ストレスなどの複合的要因により,うつの発症を説明している。
近年,子どものうつ症状は,成人とは異なる表現型をとるという考え方が支持されるようになった。子どもにおける心理ストレスに対する反応の未成熟性や,適応不全の表現形における成人との差異を考えると,こうした考え方には一定の説得力がある。少なくとも,子どもは成人よりもストレス脆弱性が高く,うつ病の発症やこれに伴う社会的逸脱による発達・成熟上のデメリットを考慮すると,より早期に適切な介入をすべきであるという発想は妥当であり,このために早期に診断する必要性はもっともであろう。
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