特集 Withコロナ時代の精神医学教育の進歩—卒前教育から生涯教育まで
特集にあたって
井上 猛
1
1東京医科大学精神医学分野
pp.947
発行日 2022年7月15日
Published Date 2022/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206689
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精神医学は昔のような精神科病院に限られた診療ではなくなっている。がん診療,産科,職場の産業精神保健において精神医学と精神科診療の導入が必要とされている。このように,精神医学は広く社会に浸透してきたため,精神科医だけでなく,すべての診療科の医師,コメディカルにとって精神医学を生涯にわたって学ぶことが求められている。さらに,精神科専門医,指導医も,若手精神科専攻医の指導だけでなく,精神科以外に従事する人たちへの啓発,教育が必要になってきている。したがって,精神科医は卒前教育から,広範囲の卒後教育を担当し,つねにその専門知識,教育手法をアップデートしていく必要がある。30年以上前の大教室での精神医学教育から,最近はアクティブラーニングを取り入れた教育に変わってきている。「門前の小僧習わぬ経を読む」のような観察型の教育では不十分であり,ロールプレイ,シミュレーションなどの積極的な教育的かかわりが教育者には求められてきている。厚生労働省臨床研修指導医講習会やがん緩和ケア研修会での研修内容もそのような時代の流れを反映している。
さらに2020年2月から新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい,医学生の講義はWeb講義となり,臨床実習も実際に病院で受けることはできなくなった。幸い,Webを介した通信技術が飛躍的に進歩したため,講義はWeb会議ソフトやオンデマンド動画を使ってなんとか実施することができたが,臨床実習は十分に実施できないため,課題が残る。医学生教育のみならず,研修医教育においても,新しい方法論を使った精神医学教育の技術革新が必要とされている。
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