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特集 サイコーシスとは何か—概念,病態生理,診断・治療における意義
サイコーシスと「精神病」—概念の歴史的変遷
Psychosis:Historical Considerations
針間 博彦
1
Hirohiko Harima
1
1東京都立松沢病院
1Tokyo Metropolitan Matsuzawa Hospital, Tokyo, Japan
キーワード:
サイコーシス
,
psychosis
,
精神病性
,
psychotic
,
神経症
,
neurosis
Keyword:
サイコーシス
,
psychosis
,
精神病性
,
psychotic
,
神経症
,
neurosis
pp.285-295
発行日 2021年3月15日
Published Date 2021/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206291
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抄録 サイコーシス(psychosis)と「精神病」の概念の歴史的経緯を概説し,現在の用法の問題について論じる。ドイツ語の“Psychose”という語は19世紀半ば,von Feuchterslebenによって“Geisteskrankheit(精神の病)”に代わるものとして採用された。当初Psychoseは,神経系疾患全般を示すNeuroseの下位概念であったが,19世紀後半以降,Neuroseが心因性・非器質性の障害を示すようになると,Psychoseは非心因性・疾患性の精神症候群を示すものとして用いられるようになり,両者は対概念となった。DSMとICDは当初psychosisとneurosisの二分法に基づいていたが,この分類法はDSM-Ⅲで廃止され,以後,psychosisは幻覚や妄想など特定の精神症状の存在を示す記述用語として用いられている。日本語の「精神病」は明治初期にGeiteskrankheitの訳語として使用され,のちにPsychoseの訳語としても用いられた。特定の症状の存在を示すにすぎない現在のpsychosisは「疾患」を意味しないため,これを「精神の病」と呼ぶことは不正確である。
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