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抄録 強迫性障害(obsessive compulsive disorder:OCD)50例について発症年齢,初診時年齢,併存症,遺伝負因,その他の臨床的特徴について調べた。その中の37名(SADの併存例13名を除く)について,(OCDの併存を除く)社交不安障害(social anxiety disorder:SAD,全般性SAD 33名と非全般性SAD 51名)と比較した。
その結果,大うつ病エピソードの併存率はOCDと全般性SADの間に有意差はなかった(非全般性SADは3群の中で有意に大うつ病エピソードの併存率が低かった)。OCDの大うつ病の併存率は全般性SADに比べ有意に低かった(OCDと非全般性SADとの間には有意差は認められなかった)。一方,双極性障害(bipolar disorder)の併存率はOCD 24.3%と全般性SAD 3.0%,非全般性SAD 3.9%とOCDにおいて有意に併存率が高かった。
大うつ病エピソードを有するOCDと(全般性および非全般性)SADにおいてに双極性障害へ診断変更になった割合を比べると,OCD 37.5%,(全般性と非全般性)SAD 7.1%とOCDで有意に双極性障害への移行率が高かった。また,抗うつ薬の投与量レベルを比較したが3群間に有意差は認められなかった。
また,大うつ病エピソード,および大うつ病を併存しているOCDについて,双極性障害と関連のある要因についてロジスティック回帰分析を用いて分析した。その結果,治療期間のみが双極性障害の併存と有意に関連していた。
今回の研究結果から,OCDの併存のある大うつ病エピソードの治療において,抗うつ薬の投与中に,その投与量にかかわらず比較的高い確率で(軽)躁状態が出現することが明らかになった。OCDの薬物療法の第一選択薬はSSRIであるが,OCDに大うつ病エピソードが併存する場合は,SSRI単独の治療でよいか今後検討する必要があろう。
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