特集 「大人の発達障害」をめぐる最近の動向
特集にあたって
内山 登紀夫
1
1大正大学心理社会学部臨床心理学科
pp.947
発行日 2020年7月15日
Published Date 2020/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206137
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DSM-5とICD-11では神経発達障害の概念のもと,知的能力障害,自閉スペクトラム症,ADHDなどが定義されました。WHOのワーキンググループでは知的能力障害をICD-11に加えるかについて多くの議論がありましたが,精神疾患の併存率が高いことから「医学的病態」とみなし神経発達障害に加えることになりました。
神経発達障害は知的能力障害,ASD,ADHDなどの発達期に障害特性が明らかになる障害の一群です。発達障害の特性は児童期のみでなく成人期や老年期まで継続します。発達障害の人の人生において児童期よりも,成人期以降のほうがずっと長いのです。発達期に親や周囲の支援を得て適応していた人が,成人期になって就職,結婚,子育てなどの事態に直面することで,多様な精神症状を呈することもしばしば経験します。大人になって初めて精神科を受診する発達障害の人も非常に多くいます。その場合の主訴はASDやADHDの診断基準にあるような症状とは限らず,抑うつや不安や身体化症状のことも多いと思われます。神経発達障害の可能性を想定し,必要なアセスメントを行うことで治療方針を立てる上で助けになることもあるでしょう。最近では高齢期の発達障害も重要なテーマであり,認知症との合併や鑑別も必要になってきました。
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