増大号特集 精神科診療のエビデンス—国内外の重要ガイドライン解説
第2章 統合失調症
コラム
—日本精神神経学会/日本糖尿病学会/日本肥満学会—統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド
久住 一郎
1
Ichiro Kusumi
1
1北海道大学大学院医学研究院精神医学教室
1Department of Psychiatry, Hokkaido University Graduate School of Medicine, Sapporo, Japan
pp.538
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405206066
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統合失調症患者のリカバリーを考える上で,身体的な健康が維持されることは不可欠な要素の1つである。精神科領域では,各関連学会において各精神疾患の治療ガイドラインが盛んに作成されているが,合併する身体疾患に関して他領域の学会と共同で作成されたガイドラインはこれまで存在しなかった。日本精神神経学会のガイドライン検討委員会において,「統合失調症に合併する肥満・糖尿病の予防ガイド」作成が起案され,日本糖尿病学会,日本肥満学会に協力を求め,3学会合同による作成が実現した。
日本糖尿病学会では,エビデンスに基づく「糖尿病診療ガイドライン」1)を3年ごとに,一般内科医やメディカルスタッフ向けの「糖尿病治療ガイド」2)を2年ごとに,患者・家族向けの「糖尿病治療の手びき」を3年ごとに作成し,日本肥満学会でも,一般医・メディカルスタッフ向けの「肥満症診療ガイドライン」3)を作成している。統合失調症患者の肥満・糖尿病予防に関しては,国内のエビデンスがきわめて少ないが,わが国の文献をできるだけ中心にして,海外の文献も参考にしながら,「予防ガイド」として一般精神科医やメディカルスタッフ向けにまとめることとした。肥満・糖尿病予防の一般論的記載は,上記2学会の診療ガイドラインや治療ガイドを積極的に引用している。しかし,利用できる精神科関連のエビデンスが限られ,エキスパート・コンセンサスの域を出ないものも多いことから,通常のガイドラインで記載されているエビデンスレベルや推奨グレードの表示は,今回あえて行っていない。
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