巻頭言
まっすぐ・こころに届く精神医療
中山 和彦
1
1東京慈恵会医科大学精神医学講座
pp.558-559
発行日 2016年7月15日
Published Date 2016/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205190
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“まっすぐ・こころに届く”という言葉の響きは優しいのですが,少し迫力がありません。でも「まっすぐ」という言葉が,気に入っていて長く温めていました。私は子どもの頃より自分の気持ちを素直に伝えることができませんでした。今でもそうですが,自己評価は常に低く自信がありません。そんな私が人の思いを知りまっすぐ相手に届くような精神医療に携わることは容易ではありません。どうすればいいのか。長くかかってたどり着いたのは「腹をくくる」,そして「肝を据える」構えでした。振り返ると本気で「腹をくくる」覚悟がないと乗り越えられないことがたくさんありました。
「健康とはなにか」と問われてなかなか気の利いた表現が見当たりません。私は長く心身医学にこだわってきたのでその視点で接近したいと思います。ひと(生命)は,心身相関のなかにあります。ひとはどんなに痛い目にあっても戦いを好むのか,正義と置き換えることで表向きの平和を求めようとします。3500年以上前の旧約聖書でも,ひとが生きること,存在することがいかに戦いの連続であるかということを示しています。
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