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はじめに
定期健康診断(健診)と同様に,少なくとも年1回,個々の勤労者のストレスを評価して,職場全体の環境を改善するという目的で厚生労働省は2014年6月19日に労働安全衛生法を改正した。その背景や法案作成の経緯については別稿において詳しく解説されるので,本法案が円滑に実施されるために準備されつつある指針,あるいは実際の運用に関する議論とその課題に関してまとめた。
本法案は,労働安全衛生法の改正であるので本来はすべての労働者に適応されるべきであるが,急激な法案の適応は,小規模事業所においてはストレスチェックそのものの実施やその後の指導が困難であること,さらに労働者,企業側にとっても経済的負担や労使関係を悪化させるのではないかと考えられ,産業医の選任義務がない50名未満の労働者がいる企業については,当面その施行は努力義務となった。そして,産業医の選任義務がある50名以上の労働者がいる企業の労働者に対して,本法案が適用されることになった。
この制度の枠組みは,2010年に提案された法案と全く同様のものである。本法案は,2012年11月の衆議院解散とともにいったん廃案になったもので,政権交代を経て,2013年9月に再開された労働政策審議会での議論などをふまえて,当初の精神疾患の早期発見・早期介入という2次予防という概念から職場におけるメンタルヘルス不調者の1次予防を目的とした法案に大きく転換した。ある意味では,労働者にとっては理想的な内容となったと考えられるが,その効果の実現性の観点からは難しいものになったのではないかと思っている。
現時点でも本法案の運用について2015年12月1日の施行日に向けて議論の最中であり,完全にその具体的な方法は決定しておらず,「面接実施方法等に関する検討会」と「情報管理及び不利益取扱い等に関する検討会」の2つの分科会で平行して議論が継続されており,2014年12月までにこれらがまとめられる予定である。したがって,2014年11月15日時点での本法案の内容,運用面の課題についてまとめてみたい。
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