巻頭言
精神分裂病の神経病理学
宮岸 勉
1
1旭川医科大学精神医学講座
pp.1012-1013
発行日 1989年10月15日
Published Date 1989/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204778
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Kraepelin, E.(1899)が早発痴呆(dementia praecox)を一つの疾患単位として記載して以来,精神分裂病(以下,分裂病)の疾患概念の確立,遺伝生物学,神経化学,神経生理学,精神薬理学,心理学,あるいは治療学等々の分野で数多くの研究が間断なくしかも精力的に行われてきた。しかし,今日でも「分裂病とはどのような病気か」という問い掛けに明確な答えをだすことは難しい。したがって,医学生をして「精神科の病気(分裂病)は,原因も治療法もよく分かっていないので取りつきにくい」などと慨嘆させることになるのも,残念ながらその通りであろう。加えて,分裂病の神経病理学に関してもやはり多くの研究報告があるにもかかわらず,この疾患の本態にふれると考えられるような知見は見当たらない。
ところで,私が精神科医になって間もなくのころ,ある先輩から「分裂病の神経病理を研究テーマにしてみてはどうか」とすすめられたことがあり,その後,今日に至る約30年間このことが常に頭の片隅にありながら,どこから手をつけてよいのか雲をつかむような思いがしたり,一方では,「Geisteskrankheiten sind Gehirnkrankheiten.,Griesinger, W.」という言葉に,うまく表現できないような魅力を感じたりしてきた。それはそれとして,CTスキャンを用いた分裂病研究における最近の知見が,Griesingerの立場を支持し始めていると憶測するのは軽率に過ぎるであろうか。
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