Japanese
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展望
中年期の発達課題と精神障害—ライフサイクル論の観点から—第3回
The Developmental Tasks and the Mental Disorders in the Middle Years as a Life-stage of the Life Cycle
佐藤 哲哉
1
,
茂野 良一
1
,
滝沢 謙二
1
,
飯田 眞
1
Tetsuya Sato
1
,
Ryoichi Shigeno
1
,
Kenji Takisawa
1
,
Shin Ihda
1
1新潟大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Faculty of Medicine, Niigata University
pp.1208-1217
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204238
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Ⅲ.4.中年の発達課題と精神障害
a.中年の幻覚妄想精神病(つづき)
2)中年の幻覚妄想精神病と中年の発達課題:すでに述べた3つの論点,すなわち発病状況における発達課題,病前性格の病理性と発達課題との交錯の問題,中年の発病に至るまでのライフサイクルの構造について順に触れていく。
表3は,この領域に関する主な研究で指摘された病前性格と発病状況をまとめたものである。各研究が明らかにした発病状況を見ると,そこには,われわれが概説してきた中年の発達課題の諸側面を見ることができる。すなわち,男性では,自分の野心と現実の実績との最終的な一致が要請されることや身体的疾患に基づいた地位の維持の不安などが,また女性では,子離れや夫婦関係の危機に基づく家庭内での孤立あるいは中年女性の職業生活上の行きづまりなど,われわれが中年に要請される役割の変換として述べてきたことが,発病の契機として見い出される。また,両性の発病の背景に,中年で生じることの多い,それまで抑えつけてきた性愛のよみがえりを認める研究者も多い。このように,中年の幻覚妄想精神病が,中年の発達課題に出会うことにより発病に至ることは,比較的容易に理解できる.
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