Japanese
English
展望
単一精神病論とその臨床的意義(後篇)
Unitary Psychosis: Concepts and clinical implication
諏訪 望
1
Nozomi Suwa
1
1埼玉医科大学神経精神科センター
1Neuropsychiatric Center, Saitama Medical School
pp.1090-1101
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204221
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V.現代における単一精神病論
1.単一精神病論の復興とその背景
ロマン主義時代に発展した単一精神病論は,Griesinger15)によって完成されさらに終結に導かれたということができる。一方,科学としての精神医学の進歩とともに,精神疾患のそれぞれの成因も次第に解明され,精神疾患全体の単一性という考え方は,理論的には成立する根拠を失ったことになる。しかし同時に,成因がまだ解明されないいわゆる「内因性精神病」の領域では,依然として単一論的な思考方式が適用される可能性が残されているとみなすこともできる。この可能性と,Kraepelinの二分法に宿命的につきまとう矛盾が臨床的にしばしば経験されるという実態とが結びついて,「内因性単一精神病」という概念の誕生をみるにいたったものと考えられる。このように,現代の内因性単一精神病論は,歴史の流れの中でロマン主義時代の単一精神病論とのかかわりをもってはいるが,決してたんなる再現ではないことに留意しなければならない。
すでに述べたように,単一精神病を主題とするかまたはそれに深く関連した総説は,Rennert37,38)およびVliegen49,50)らによってまとめられているが,それらをみると,単一精神病について論ずる場合には,少なくとも精神医学の思想の流れに関与するすべての論説を検討しなければならないことになる。しかしそれはあまりにも繁雑であり,また実際には不可能でもあるので,RennertやVliegenの論述の中で浮び上ってくる,いくつかの重要と思われる所論をとりあげ,それらをつなぎ合せて,現代における内因性単一精神病論の大筋を描くことにする。
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