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1985年11月22日から24日の3日間,パリ第7大学,精神分析精神病理研究センターのP. Fedidaの主催で上記の名を冠する学会が開催された。この学会には日本から木村敏が司会者として参加した。Binswangerの主著の翻訳が出版されていず,Minkowski以後は精神病理学に現象学の影響が大きいとは言えないフランスにおいて,現象学とBinswangerの名を冠する学会が開催されることは珍しい現象であるし,また今後毎年回を重ねていく意向が主催者側にも参加者側にもあり,今後の動向が興味深い学会なので,その報告を行いたい。
まず主催者であるP. Fedidaとパリ第7大学について簡単に触れたい。現在フランスにおいて,精神分析がいわゆる正統派とLacan派の二極に分かれる中,ある時期までLacanとともに活動し,その後Lacan派と袂を分けたLaplancheが率いるパリ第7大学は,Lacanの思想を吸収しつつ大学で活動している正統派としてパリⅦ派と呼ばれ,雑誌“Psychanalyse a L'Universite”を刊行し,また多くの充実した出版物を出し,今後の精神分析の動向を握る大きな影響力を持っている。この雑誌“Psychanalyse a L'Universite”の編集委員の一人であるP. Fcdiclaは哲学教授資格を持つ分析家であり,主著“L'Absence”をはじめ多くの著書がある。Binswangerの名を冠する学会が,精神分析家によって開催されることは,精神分析と現象学とを二分して考える視点から見るとやや意外であるが,この国における精神分析が実に広い基盤の上で活動しているという事実を良く反映している。
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