動き
第20回脳のシンポジウム印象記
稲永 和豊
1
1久留米大学医学部精神神経科
pp.1094-1095
発行日 1985年9月15日
Published Date 1985/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405204014
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今回の脳のシンポジウムは20回めのシンポジウムであり,日本学術会議脳研究連絡委員会の主催により,また岡山医学会,中国・四国精神神経学会の後援によって,岡山大学医学部において3月8日,9日の2日にわたって開かれた。現時点におけるそれぞれの研究課題の最先端の問題がこのシンポジウムにおいて明らかにされたことは意義深いことであった。この印象記をまとめるにあたり,それぞれの演者から講演の内容に関連した数多くの論文や抄録をいただいたが,紙面の都合で充分に紹介できないことをお許しねがいたい。本シンポジウムの内容は「神経研究の進歩」第29巻6号(60年12月発行予定)に掲載される予定であるので詳細はそれらの論文を参照されたい。
第1日は「機能性精神病の生物学」と題して,午前中は大月三郎氏(岡山大精神)の司会で躁うつ病がとりあげられた。成瀬浩氏(国立武蔵療養所神経セソター)は安定同位体を用いたうつ病におけるin situのアミノ酸,アミノ酸代謝について述べた。今迄得られた知見の中で注目されるのはPhe-d5を経口的にうつ病者に与え,血中のPhe, Tyrの代謝を分析したところ,Tyrの生成・分解が著明に低下していることが分った。30名のうち27名すべてにこのような所見がみられ,治療により病像が改善されるにつれて,正常化した。その他Tyrトランスアミネース系の障害が目立つこと,Tyramineの生成の障害も考えられることを指摘した。
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