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I.はじめに
Carrollら2)が内因性うつ病のうつ病相ではデデキサメサゾン抑制試験(DST)によるコルチゾールの抑制が不充分であることを報告して以来数多くの研究が重ねられ,内因性うつ病におけるDST非抑制の陽性率は25〜60%程度で,この所見は恐らくはstate dependentなものであろうとされている1)。すなわちうつ病相ではDSTは非抑制となるものが多いが,寛解期あるいは躁病相8)になるとDSTの反応は正常化するものが多い。では躁うつ混合状態ではDSTはどのような反応を呈するのであろうか。この点に関しては最近若干の研究報告3,5)がみられ,躁うつ混合状態ではDSTは非抑制となるようであるが,本邦では今のところ報告例は見当らない。
一方Prangeら7),Kastinら4)はうつ病者においてTRH負荷後のTSHの反応が減弱あるいは欠如していることを報告しているが,この所見の陽性率は20〜50%程度で,内因性うつ病のtraitmarkerではな法いかと考えられている6)。この見解が妥当であるとすれば寛解期および躁うつ混合状態を含む病相期においてもTRH負荷に対するTSHの反応は減弱していると予想されるが,躁うつ混合状態でTRH負荷試験を実施した報告は未だなされていない。
現在われわれはDSM-IIIのMajor AffectiveDisorderに該当する入院患者を対象として,内分必機能異常と臨床経過および抗うつ薬に対する反応性との関連の有無を明らかにする研究を行っているが,その対象群の中の双極感情障害頻発型(Bipolar disorde,rapid cycler)の1例において,躁うつ混合状態とその前後のうつ病相でDSTおよびTRH負荷試験を行ったので,その結果について報告したい。
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