Japanese
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特集 DSM-III—その有用性と問題点
アルコール性精神障害
Clinical Usability of DSM-III: Alcohol Mental Disorders
加藤 伸勝
1
Nobukatsu Kato
1
1東京都立松沢病院
1Tokyo Metropolitan Matsuzawa Hospital
pp.137-143
発行日 1984年2月15日
Published Date 1984/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203714
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I.はじめに
DSM-IIIがわれわれに示されてから,既に2年近くが経過する。"ミニD"といわれる小さい抜萃本を手にしたときに,あまりにも大胆な疾患分類の変更と診断基準の操作化に戸惑うとともに従来診断と対比してみる作業を通さないと簡単にこれを受入れるわけにはゆかないと思った。約1年かけて,筆者の前任の教室でも新患について,入院時診断を決める際に,DSM-IIIに準拠する作業を行ってみた。若い諸君ほど順応は早かったが,精神分裂病や躁うつ病の診断基準の問題もさることながら,物質常用障害と器質性精神障害に分類されたアルコール精神疾患の診断は,そうした2分法になれるまでかなりの時間を要した。アルコール精神疾患は,伝統的な精神医学では中毒による外因性精神病の概念の下に分類されてきた。また,疾患単位論に基づく伝統的な診断分類では,アルコール精神疾患に複数の診断名をつけることは,診断を曖昧にするとして排除され,単一の診断名をつけることが習慣化されてきた。そうした教育を受けて育った医師達にとって,確かにDSM-IIIの診断技法は型破りであるし,また,物質常用障害と器質精神障害を分ける分類にも割り切れないものが残る。
しかし,何故このような分類法に至ったかについて,DSM-IIIテキスト本文1)を読んでみると,成程とうなづける点もある。そこで,筆者は,ここでは,与えられたテーマである「アルコール精神障害」について,DSM-IIIの分類と診断基準を実際の疾患例に照らして検討し,その有用性について検討を加えてみることとした。この作業の概略はすでにその一部を発表したので,参考にされたい2)。
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