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特集 アルコール依存症の精神医学—東京都精神医学総合研究所 第10回シンポジウムから
現代社会とアルコール依存症—アルコホリック・ソーシアル・システムの概念を手がかりに
Changing Japanese Society and Alcohol Dependency: With the concept of "Alcoholic Social System"
清水 新二
1,2
Shinji Shimizu
1,2
1前東京都精神医学総合研究所
2現大阪市立大学生活科学部
1Dept. of the Science of Living, Osaka City University
pp.1271-1280
発行日 1982年12月15日
Published Date 1982/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203506
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わが国のアルコール消費量は戦後着実に増加を続け,それと平行してアルコール問題の深刻化にも関心がもたれ始めている。確かに基本的な傾向としては深刻化の兆しを窺うことは可能であるが,その深刻化のあり方はそう機械的なものではなさそうである。問題を相対化して述べれば,現状では日本の場合むしろなぜさほどには問題が深刻化しないのか,といった問題設定も十分意味をもってくる。
かように再定式化されたこの問題に関しては,酵素モデル,摂取様式モデル,規範モデル,社会統合モデルの4つのモデルが抽出されうるが,もとより一つのモデルで全てが説明されるわけでなく,説明されるべき問題の局面によって強みと弱みを併せもっている。このことを前提とした上で,本論では社会学的立場から主として第4の統合モデルに立脚した場合なにが見えてくるか,一つの見方を提示した。
すなわち,わが国の飲酒文化と社会構造はアルコホリック・ソーシアル・システム(ASS)と慨念化することにより関連づけられた。次いでASSが大枠として維持されているがために許容と統制の統合メカニズムが作動し,多かれ少なかれその効果がアルコール問題深刻化に一定の抑止力をもっていることが導かれた。と同時にこの抑止力の作動の仕方は,社会変動の影響により多様な形をとり,このことによりアルコール問題のあらわれ方の地域的差異が結果されることも,高知と秋田の場合がとりあげられ考察された。社会変動が先行し再組織化さえ進んでいるとみられる東京なども含めて,今後とも社会変動の絡みでこの問題をみてゆく必要があろう。
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