Japanese
English
古典紹介
Josef Gerstmann—手指失認—自分の身体の位置づけの限局した障害—第1回
Josef Gerstmann: Fingeragnosie: Eine umschriebene Störung der Orientierung am eigenen Körper〔Wiener Klinische Wochenschrift, 37;1010-1012, 1924〕. Fingeragnosie und isolierte Agraphie: ein neues Syndrom〔Zeitschrift fur die gesamte Neurologie urld Psychiatrie, 108;152-177, 1927〕
板東 充秋
1
,
杉下 守弘
2
Mitsuaki Bando
1
,
Morihiro Sugishita
2
1東京大学医学部神経内科
2東京都神経科学総合研究所臨床神経学部リハビリテーション研究室
1Dept. of Neurology, Tokyo Univ. Faculty of Medicine
2Div. of Rehabilitation, Dept. of Clinical Neurology, Tokyo Metropolitan Institute for Neurosciences
pp.665-670
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203434
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
外科医でもあり,神経学者,精神病理学者でもあったAmbroise Pare以来,身体部分(四肢,乳房,陰茎等々)を切断した様々な患者が,存在しないはずの肢節(身体部分)をなおも長く感じ続けることは周知の事実である。このような患者は,切断された身体部分が,なおも存在するという感じが(特に最初の頃は)余りに強く,切断されていることを全く意識しないこともある。このため,例えば,足をなくしたことを何度も忘れ,これを掴もうとしたり跳び上がろうとして倒れてしまう。このような簡単な事実より次の如き知見が明らかになる。
我々は自分の内に——十分意識してではなく,意識の中心からは外れたところで—自分の身体についてのいわば身体図式,Headの用語では姿勢模式(Postural model)を持っている。自分の身体の内的表象,誰もが持つ自分の身体的自我の空間像とはこのような意味に解されるべきである。この身体空間像はすぐれて視覚的だが,ある程度は触覚—運動覚的でもある。身体図式は,全体として「我々の身体性の意識の本質的土台」(Pick)を表わしている。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.