Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.カナダの医療制度
カナダという国は,非常に新しい国で,また膨大な国である。アメリカと同じくらい,あるいはもっと大きいくらいの面積をもっているが,全人口は2,000万をわずかに上回るぐらいで,アメリカの1/10にもならないという人口密度の希薄な国である。まだ200年にも足らない歴史で,本当の意味での新開発,つまりこれから発達していこうという国であるので,いつも将来をどうするかということを考えている国といえる。もう一つ非常に特徴的なのは,新しい移民が次々と波状をなして入ってくる。もちろん古い移民もいていわば結局移民の国である。そしてその移民が自分の文化,自分の言語,風俗をそれぞれ保っているという意味でも,ちょっと珍しい国といえる。しかも国の政策としては,それぞれの移民集団,あるいは移民文化をできるだけ保存しようと努力している。こういう意味ではアメリカとやや違う。アメリカでは,一つのスローガンとでもいえるいわゆるmelting potというものをみなで考えている。つまりできるだけuniformにもっていきたいというのが,どうも全体的なアメリカの人たちの考え方であるが,カナダはそれぞれの,例えばフランス人ならフランス人,イギリス人ならイギリス人,また東洋からきた中国人,日本人の集団というもの,それぞれが自分の文化を保存し,それを伸ばしていく。その代りもちろんみんなに共通するものはできるだけ発達させていこうという一つのおもしろい,非常に特徴のある国だと思われる。
したがってその国へ,わたしが一つの仕事の場を求めて行ったというのは,やはり理由があったのである。それはcross-cultural studyにわたしは非常に興味をもっている。それでミシガン大学当時,ブリティッシュ・コロンビア大学から来てくれと言われた時に,これはあるいはそこで非常におもしろい仕事ができるのではないかと思って,移る決心をしたわけであったが,案の定わたしはこの6年間のわたしの生活,仕事のほうは楽しかったし,また非常にやりがいがあった。
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.