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I.はじめに
精神分裂病の精神生理学的研究はこれまで非常に多くの報告があり,分裂病者では正常者からかなり偏りのある知見が得られてきている。一方,これまでの患者家族の研究は,家族成員のパーソナリティや家族全体の様態,さらには家族内コミュニケーションの様式などに関するものが多い。例えば,Lidzら23)は,分裂病の家族には夫婦間の役割と分裂とがあり,それが分裂病の病因になっていると報告し,わが国でも高臣ら56)(1966)が分裂病家族を父母との関係で,そのありかたを4群に分けたり,藤縄ら5)(1966)が画一型,分割型,散乱型の3群に分けて考察している。また井村・川久保ら18)(1966)による離散型,同化型,牧原ら31)のかかわりのサイン欠乏型,存在型など分裂病患者家族の様態を明らかにした研究は多い。家族病理をコミュニケーションの様式からとらえたものとして有名なBatesonら2)(1956)の二重拘束説,Wynneら59)(1958)の偽相互性などがみられる。
しかしながら,このような研究の多くがなお心理的観察の範囲内にとどまっており,分裂病患者家族の上記のような特殊な家族の様態や,コミュニケーションのありかたの背景にある生物学的基盤についての研究はまだその緒についたばかりであるといえよう。Reiss(1976)41)が指摘するように家族生活におけるコミュニケーション過程は子供の注意と知覚能力の発達に影響を与え,それがまた遺伝的に規定されている点を考えれば,分裂病患者家族(両親,子供,兄弟)の精神生理学的研究は分裂病解明に重要な手がかりとなるであろう。
枚数の都合もあり,「分裂病」の項における脳波,誘発電位,CNV,皮膚電気反応,瞳孔反応,睡眠などについての研究の紹介は島薗51),島薗・安藤ら50)の綜説に詳しいので,それを参照していただき,ここでは眼球運動,局所性脳血流量,注意・認知障害にしぼり,これまでの報告を紹介し,「家族」の項では,いわゆるhigh risk群に関する研究を中心として,注意・認知障害,自律神経機能など比較的新しい知見について述べてみたい。
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