Japanese
English
特集 妄想
妄想患者とのつき合いと折り合い—してはいけないらしいことと許されるだろうことと
Umgang mit Wahnkranken
中井 久夫
1
Hisao Nakai
1
1名古屋市立大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Nagoya Municipal Univ. School of Medicine
pp.138-142
発行日 1979年2月15日
Published Date 1979/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202890
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
われいまだ妄想を知らず,いわんや妄想患者の精神療法をや,というのが,いちばん正直なところかも知れない。
私の思考の中で,妄想はいつも焦点に据えられたことがなかった。妄想はどうも私にとって思考の中心にやってくることを拒むようだった(本稿はしたがって苛酷な課題論文である)。私は患者の話を聞いてはきた。時には耳を傾けて聞いたこともないではない。けれども,私は患者の妄想を聞いたのではなかった。患者の語るところをあるいは沈黙を聞いたにすぎないのである。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.