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I.はじめに
現在うつ病者に対する薬物療法において,その主剤となる薬物が三環系抗うつ剤であることはいうまでもない。しかしながら口渇,尿閉,便秘など抗コリン作用による副作用のためにその投薬を中止せざるを得ないことがあり,また前立腺肥大を持つ老人や緑内障を合併している患者には投与しにくい。
Vivalanは三環系抗うつ剤のこうした欠点を持たず,薬効において三環系抗うつ剤とほとんど差がない薬剤とされている11)。一般名はviloxazine hydrochlorideで,化学名は2-(2-ethoxyphenoxy-methyl) tetrahydro-1,4-oxazine hydrochlorideであり,構造式は次に図示したとおりであって,数少ない非三環系抗うつ剤の一つである。
Vivalanは1967年,英国ICI社においてβ遮断剤の誘導体として合成され,動物実験により抗うつ作用,抗けいれん作用,鎮静作用を持つ可能性が見出された。例えばMallionら14)(1972)が行なった動物実験では次のような結果が得られた。reserpine,tetrabenazineによる体温降下,眼瞼下重を防ぎあるいは拮抗する作用を持つ。noradrenalineの作用を増強する。これらは三環系抗うつ剤と同等の効力である。覚醒ラット脳波においてdesynchronizationを引き起こし,amphetamine様の作用を示す。ただし運動量の増大,体温上昇,交感神経興奮作用などの作用は持たず,この点amphetamineとは異なる。ラットにおいて電撃誘発性けいれんを防止する。すなわち,amphetamineと三環系抗うつ剤との両者に共通した神経薬理学的作用がみられた。
臨床試験は1970年より各国で行なわれ,その結果すぐれた抗うつ作用が明らかになり,安全性においても特に重篤な副作用は認められなかった。すなわち,三環系抗うつ剤と異なり抗コリン作用がなく,鎮静作用が少なく,循環器系への影響もほとんどがみられないという結論が出され2,19),欧州では英国を中心にすでに広く使用されている。
今回われわれは,ICI社および住友化学工業(株)より本剤の治験を依頼され,open studyとして使用する機会を得たので,その結果をここに報告する。
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