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I.はじめに
三環系抗うつ剤の副作用に関する報告は少なくないが,その対策についての報告は少なく,副作用が重篤であれば抗うつ剤を中止し,軽微であれば放置するといった,きわめて消極的な態度がひろくみうけられる。強力な主作用をもつ薬剤にとって副作用は多かれ少なかれ不可避的というべきかもしれない。しかし,neurolepticaによって生じる錐体外路症状に対して抗choline性抗パーキンソン剤が用いられるように,抗うつ剤の副作用に対しても,これを軽減して患者の苦痛をやわらげる方策が求められて当然であるといえよう。
代表的な三環系抗うつ剤の副作用としては低血圧,発汗過多,口渇,鼻閉,排尿困難,調節障害,意識障害などがあげられている。これらの副作用は主として抗うつ剤の強力な抗choline作用によるとされているが,発現機序について十分解明されていないものも多い。
したがって,低血圧に対して昇圧剤,口渇に対してL-cysteine,ethylestcr Hcl dihydroergotamineなどの内服の有効性が示唆されている程度である。排尿障害については,これを治療する薬物とてないが,本来一過性であり,対症的には留置カテーテルを使用し,原因的には減薬や休薬によって,治療しうるといわれ,尿路感染や腎う炎の併発ひいては非可逆的な腎機能障害をまねくおそれがあるとしながら,積極的な対応はなされていない。これらの副作用出現による精神症状の増悪や医師に対する不信感をまねくおそれがある一方,副作用対策としての減薬や休薬により精神症状の悪化も当然問題になるであろう。とくにその患者が自殺念慮を持っているような場合,問題はいっそう深刻である。
われわれは三環系抗うつ剤による治療中に生じた排尿障害に対して,Eviprostatを試用し,はなはだ興味ある知見を得た。これは前述の副作用対策として有用なものと思われるのでここに報告する。
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