Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
神経心理学の領域においてN. Geschwindに代表されるBoston学派が古典的連合論associationnismeの再興ともいえる離断学説disconnexiontheoryを提起してすでに久しく1),爾後の研究に多大の影響を及ぼしてきたことは否定できない事実であるが,一方,今世紀初頭,Wernicke,Liepmann,Dejerineらの"連合主義者associationniste"に対し"偶像破壊者iconoclaste"として登場したPierre Marieの立場を弁護2)し,そこにjacksonnismeを導入することによってこれを継承発展せしめたと考えられるTh. Alajouanine,F. Lhermitte一派の研究活動は,ある意味で連合論の対極ともいえる視点から出発しており,したがってその一連の研究成果や,とりわけdisconnexiontheoryに対する最近の見解は,注目に値するものであるに違いない。筆者は1976〜1977年度のフランス政府給費留学生としてF. Lhermitteの診療科に籍を置き,そこでの診療研究体制やF. Lhermitteを含めた各スタッフの学問的立場を知る機会を得た。F. Lhermitte教授は1978年秋,日仏医科会の招きで訪日の予定ときく。この機会に,今まであまり詳しくは知られていなかった彼の研究グループの概要を,筆者の知りえた限りで紹介しておきたいと思う。
François Lhermitte(写真1)は1921年の生まれで,周知の如く高名な神経科医であったJeanLhermitteの子息であり,1950年に《Les Leuco-Encéphalites, étude anatomoclinique et expérimentale》なる学位論文3)を公にし,1950年代はTh. Alajouanine,J. Delay,P. Castaigne,J. C. Gautierらと神経学領域の研究を行ない,1950年代後半からTh. Alajouanineの高弟の一人として失語論を主とする神経心理学領域の研究に従事し始め,Alajouanineの創始したParisのSalpêtrière病院の言語センターCentre du langageを引継いで1965年,神経学,神経心理学診療科Service deneurologie et de neuropsychologieの教授となった。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.