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I.はじめに
Creutzfeldt-Jakob病(以下C-J病と略す)は,初老期の痴呆の1つとして考えられてきたが,栄養障害や中毒など何らかの外因を考えようとする立場がはやくからあり,同じ初老期の痴呆であるAlzheimer病やPick病と同じ範疇に入れることに疑問をいだく人達がはやくからいた1)。1968年のGibbs,Gajdusek2)らの仕事で"transmissible"な疾患であるということが示されて以来,感染性の疾患であろうという考え方が強くなり,第7回国際神経病理学会(1974年)においてもC-J病をInflammatory(Infectious)Diseaseとして扱っている3)。一方,transmissibleであった症例がすべて亜急性海綿様脳症(以下SSEと略す)の病理組織所見を示し古典的C-J病とは異なることなどから,従来から支配的な考え方である古典的C-J病とSSEが同一であるという考え方に批判的な立場をとる人もいる4)。また白木5)は第14回日本神経病理学会における本疾患に関するシンポジアムの中で,古典的C-J病,SSE,thalamic typeなどそれぞれをC-J症候群とみて,各々の原因について検討していくことが必要であろうと述べている。このように従来から病理組織像の性質と臨床像が類似しているこどから,一括してC-J病として扱われてきた亜型についてすべてが同じ原因で発症しているのかとうか未だに疑問が残されているわけで,今後とも詳細な症例の検討がなされていく必要があるように思われる。
われわれは病理組織学的には視床に強い病変をもち,終脳外套皮質の広範な海綿様状態とエオジン好性の核内封入体が認められ,臨床的には比較的高齢で発症し,Korsakoff症候群をはじめとし興味ある精神症状と視覚異常,運動障害なとを示しながら約2年の経過で死亡したC-J病の1例を経験したのでここに報告する。
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