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I.はじめに
Histocompatibility antigensとしてのHLA(Human Leucocyte Locus A)の最近の発展には目覚ましいものがあるが,HLAを臨床的見地からみたとき2つの興味ある問題があるといえる。1つは当然のことながら移植における組織適合性抗原としての役割,もう1つは最近注目を浴びている疾患感受性との関係である。
移植片graftが生着するか否かは,donorとrecipientが感受性因子をどれくらい有しているかによって決まり,この移植片graftの持つ移植抗原が組織適合性抗原であると考えられている。白血球,とくにリンパ球に移植抗原の存在することは1946年Medawar1)によって明らかにされた。1958年Dausset2)は頻回輸血を受けたヒト血清中に約60%の白人の白血球を凝集する抗体を発見し,その抗体と反応する白血球抗原をMac抗原(現在のHLA-A2)と命名した。同じころPayneら3),van Roodら4)によって妊婦血清中にも抗白血球抗体が発見された。かくして,microdroplet lymphocyte cytotoxicity testによって妊婦血清から抗リンパ球抗体が得られるようになり,その特異性をめぐって各国研究者間で検討がなされていることは周知の通りである。
白血球抗原には血清学的に検出されるSD(serologically defined)抗原と,混合リンパ球培養(mixed lymphocyte culture:MLC)反応(mixed lymphocyte reaction:MLR)によるLD(lymphocyte defined)抗原と呼ばれているものがある。ヒトの組織適合性抗原はほとんどすべての組織に分布していると考えられているが,研究対象として白血球(主にリンパ球)抗原が使用されてきた関係上,1975年第6回International Workshopにおいてヒトのすべての組織適合性遺伝子座を含む主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex:MHC)に対しHLA(human leucocyte antigenまたは,human leucocyte locus A)と命名され,それによって規定される抗原SD-1(LA series),SD-2(FOUR series),SD-3(AJ series)はおのおのHLA-A,HLA-B,HLA-Cと,またLD-1(MLC-1)はHLA-Dと改称された5)。ヒトのMHCは6番目の常染色体上にあると考えられ,図1のような位置関係にあることが知られている。現在までにWorkshopで認定されたHLA特異性はLocus A(A)に20種類,Bに20種類,Cに5種類,Dに6種類の計51種である。
HLAと疾患感受性との関係はLillyら6)のマウスの白血病発生率とH-2(マウスの主要組織適合系)の関係が報告されて以来,ヒトにおいても活発に研究されるようになった。まずAmiel7)によってHodgkin病とHLAの4cとの関係が報告されたのがはじめてであろう。その後種々の疾患で検索が行なわれた8,56)(表1)。
本稿ではHLAと疾患感受性の関係を主に神経疾患について,また精神科疾患の免疫学的異常とHLAとの関連について論じたい。
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