Japanese
English
研究と報告
対人恐怖を伴う境界例の臨床
On the Borderline State Associated with Anthropophobia
青野 哲彦
1
,
金子 元久
1
,
大塚 健正
1
,
渡辺 吉彦
1
,
松田 岱三
2
,
尾野 成治
3
Tetsuhiko Aono
1
,
Motohisa Kaneko
1
,
Kensei Otsuka
1
,
Kichihiko Watanabe
1
,
Taizo Matsuda
2
,
Shigeharu Ono
3
1福島県立医科大学神経精神医学教室
2国立仙台病院精神科
3福島大学教育学部特殊教育研究室
1Department of Neuropsychiatry, Fukushima Medical College
2Department of Psychiatry, Sendai National Hospital
3Department of Special Education, Faculty of Education, Fukushima University
pp.959-966
発行日 1976年9月15日
Published Date 1976/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202528
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I.はじめに
人前で,自己の表情が変化してしまうと確信して悩む者は,本邦では一般に対人恐怖症と診断されているが,この中には分裂病との境界例,あるいは分裂病の初期段階と考えられるものも含まれている1〜3)。これに対して,諸外国では本邦におけるような対人恐怖の記載は少なく,むしろ醜形恐怖4)(dysmorphophobia)の記載が多い。そして,醜形恐怖のもつ境界例性5,6)についても報告されているが,笠原1)などが指摘するように,西欧では,醜形恐怖はそれによる対人性よりも醜形性そのものについて論じられる傾向にある。一方,現代は分裂病の神経症化と神経症の分裂病化の時代7)ともいわれており,この種の症例が内外ともに増加しているのも事実と思われる。
我々の教室でも,これまでに,いわゆる境界例について考察してきたが8,9),今回は対人恐怖症者で,最終的には分裂病との境界例と診断した症例について検討したので報告する。
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