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特集 対人恐怖
対人恐怖の精神分析
Psychoanalysis of Anthropophobia
西園 昌久
1
Masahisa Nishizono
1
1九州大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Kyushu Univ. School of Med.
pp.375-381
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201610
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I.はじめに——対人恐怖はわが国に多いか——
昨秋に予定されていた「対人恐怖」というテーマのシンポジウムで司会者は「従来,対人恐怖は,わが国をはじめ,ごく一部の文化圏に多発するという説が,学会でも支配的であった」と述べ,そのようにいわれてきた理由が一体何であるかという比較精神医学的立場からの究明を第一の課題としている。次いで,第一の課題から必然的に対人恐怖の本態の解明が問題にされ,最後により効果的な治療法を見出すことを問題にしている。
さて,対人恐怖ははたして,わが国に多いのであろうか。もしそうだとしたら,わが国の文化的特徴とどのように内的連関を持っているのであろうか。高良(1955)はHorneyとの個人的接触を通じて,アメリカで対人恐怖を主訴として治療を求めてくる患者がきわめて少ないことを知ったと述べ,さらに,わが国では神経症のうち対人恐怖の占める比率が大きく,森田の報告では541名の神経質症者のうち170名,すなわち,31.4%が対人恐怖症者であり,高良自身の経験では,神経症者1,679名のうち,実に,619名36.8%が対人恐怖を主訴とするもので,これは,わが国の特異な現象であるとしている。研究報告の数の多少がただちにその研究の対象の多少を示すものではなかろうが,研究者の関心の大小を示すものということはできるだろう。たしかに,対人恐怖が研究の対象としてとりあげられたのは主としてわが国を中心とするものであるらしい。
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