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I.はじめに
末端肥大症および巨人症に伴う精神障害については,既に19.世紀末より記載がある1)。最初の文献例はBlair(1897)の報告したもので,躁状態を基調としてこれに幻覚や嫉妬妄想などが挿間性にみられたとされている。その後,散発的に宗教的異常体験を示した例,抑うつ気分と性的不能から妄想に発展した例,てんかん発作を繰り返した例などがそれぞれ1例報告された1)。末端肥大症における精神障害について,多数の症例を系統的に研究したのはM. Bleuler一派のBlickenstorfer1)(1951)で,内科,脳外科医の協力を得て診断の確定した末端肥大症および巨人症患者22例を精神医学的に診察し,またM. Bleuler(1951)自身も米国の末端肥大症患者6例の深層心理を詳細に分析し2),これらの症例に共通した特異な人格障害を見出した。しかし,Bleulerらは,この人格障害は末端肥大症だけに特異的なものというよりも,広く他の内分泌疾患にも共通したいわゆる「内分泌精神症状群」3,4)に属するものと結論した。そして,これらの報告が,今日までの末端肥大症に関する総合的な精神医学的研究ということになっている。
内因性精神病が身体的基盤をもつか否かは今日なお不明である。しかし少なくとも内因性精神病をそのような方向から解決してゆこうとする研究者があり,この命題は彼らにとって作業仮説である。我々は「内分泌疾患に伴う精神障害」という問題に興味をもち,このような症例研究を行なってきた5〜7)。内分泌疾患を含めて広く症状精神病に関していえることは「ある症例が内因性か症状性かを決定することではなく」,現実の症例をみても,身体的基礎を有する症例における精神病と未だにわからない内因性精神病の精神症状の間にはっきりとした違いのある場合もあり,精神病理学的に内因性精神病と区別できない症例も多く存在することも事実である。そして結局,内分泌疾患に伴う精神障害についても,問題点となるものは,1)症状精神病としての一般性,2)基礎疾患における個別的特徴,3)状態像におり込まれた個々の症例の体験反応的部分,などの有無ということになるであろう。
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