- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
考按
11人の子ども(男8,女3)の病歴の要約は,当然のことながら,障害の程度,特徴の現れかた,家族構成,そして長年の経過の中での一歩一歩の成長などにそれぞれ個人差のあることを示している。にもかかわらず症例を一瞥しただけでもどれにも共通する本質的特徴があることが明らかである。これらの特徴は今まで報告されたことのないユニークな“症候群”を形成しており,それは稀ではあろうが,恐らくは観察された数少ない症例よりはより多いものではないだろうかということを示唆している。こうした子どもが今日まで精薄とか分裂症と見なされていたという可能性は極めて大きい。事実観察された数例は白痴または痴愚として紹介され,1例は州立精薄施設に居り,2例は分裂症と診断されている。
目立った“本病特有の”基本的障害はこうした子どもたちの生まれた時からの人や情況との間に普通のかかわり合いをもつことができないということである。このことを両親たちは“自己満足”“殻を閉じてその中にいる”“ひとりにされることが一番好き”“まるで周囲に人が居ないように振舞う”“周囲の一切に無頓着”“もの言わぬ賢さの印象”“通常の社会的関心の発達の悪さ”“催眠にかかったかのような振舞い”などと訴えている。このことは分裂症の子どもやおとなの場合のように元来存在していた人間関係からの発病ではない——つまり以前には存在していたかかわり合いからの“引き籠り”ではない。そこには生まれた時以来の,何でも子どもに向かって外から来るものごとにできる限り関心を向けず,それらを無視し,締め出してしまおうという極端な自閉的孤立がある。この孤立を邪魔するおそれのある直接の身体的接触,そのような動作,または音は“あたかもそれがなかったもの”のように扱われるか,或いはそれでも不充分な場合には苦痛に満ちた邪魔ものとして痛ましく嫌がられる。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.