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特集 在宅精神医療—日常生活における指導と治療
Ⅵ.精神障害者の家族問題,家族への働きかけ
Participating in Family Problems of Psychiatric Patients
牧原 浩
1
Hiroshi Makihara
1
1順天堂大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Juntendo, Univ. School of Med.
pp.701-710
発行日 1976年6月15日
Published Date 1976/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202504
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I.はじめに
私にとって精神障害者の家族にどう働きかければよいかというテーマは常に大切な問題でありながら,同時にこれまでどうにもならない問題でもあった。というのも,私の主な関心は分裂病の家族に向けられていたのだが,数例の事例について病者をとりまく家族状況がわかってくるにつれて,家族との接触は,せいぜい患者のおかれた家族内の立場に対して治療者が理解を深め,その理解を患者個人の治療に反映させ役立たせるという範囲内でのみ意味があり,家族そのものに働きかけることは大変むずかしいことだと考えていたのである。
しかしここ数年,再びこの問題についてまじめに考えなければならないと思うようになってきた。その最大の理由について述べると,私は分裂病に関して家族問題の重要さを感じながらそこに介入してゆく自信がもてず,患者に対する精神療法的接近を軸とする治療を長年重視してきたが,その円滑な進行を遮る一つの障壁としてやはり家族の問題があることに,あらためて思い至ったのである。アメリカでは最近個人精神療法家や,主に成因論的見地から分裂病家族を研究していた人人——例えばLidz,Alanenなど——が続々と分裂病家族への治療的働きかけ(この場合は家族療法)に力を入れ始めたと聞いているが,かかるアメリカにおけるダイナミックな変転も,私には大きな刺激になっているように思われる。
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