Japanese
English
研究と報告
失語症の喚語困難とモーラ数の想起
The Latent Capability Expressed as the Recall of the Number of Moras in the Word at the Naming Difficulty of Aphasics
杉下 守弘
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
1Dept. of Epidemiology, School of Health Science, Faculty of Med., Univ. of Tokyo
pp.631-640
発行日 1972年7月15日
Published Date 1972/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201913
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失語症患者が喚語困難状態にあり,事物の名前を言えもせず,書けもしない場合,その名前のモーラ数なら想起できるかどうかを検討した。対象は20名の失語症患者である。そのうち6名はBroca型失語症,2名はWernicke型失語症,1名は健忘失語症であり,他の11名は分類不能なものであった。
37枚の線画を患者に示し,その名前を言えず,また書けぬ場合に,そのモーラ数をキー・スイッチを押させて答えさせた。37枚の線画中26枚はモーラ数とsyllable数が一致している語(名称)が描かれており,11枚はモーラ数とsyllable数が一致していない(syllable数がモーラ数より1つ少ない)語が描かれている。
結果は次のようであった。
1)5名の患者は喚語困難な語でも,そのモーラ数を正しく想起できた。その5名のうち3名はBroca型失語症,1名が健忘失語症であり,他の1名は分類不能な者であった。これはLichtheim(1885)の結果と一致しない。それに日本語にはかな文字があるためと考えられる。かな文字数とモーラ数は一致しているため,モーラ数の記憶が強められるからであろう。
2)上記5名において,モーラ数がsyllable数と一致しない語が喚語困難となったときは,一致する語が喚語困難となったときにくらべてモーラ数想起の誤りが多かった。そして,その誤りはモーラ数を1つ少なく答える誤りが多い傾向がわずかに認められた。
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