Japanese
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研究と報告
島根県隠岐島都万村での地域精神医療のこころみ
Some Experiments of Community Mental Health Work in the Isolated Island Okino Shima, Tsuma-Mura Village
春木 繁一
1
Shigekazu Haruki
1
1国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院神経科
1Dept. of Neurology and Psychiatry, Yokohama Minami Kyosai Hospital
pp.615-622
発行日 1972年7月15日
Published Date 1972/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201911
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I.はじめに
わたくしは,昭和44年5月から昭和45年10月末まで島根県隠岐郡都万(つま)村において国保診療所の医師としてこの地域の一般医療に従事した。この期間にわたくしは少なからずの在宅の精神疾患者達に接しその診療を担当した。そこで本稿では,わたくしが現地において行なった活動の内容の一端を記そうと思う。とりもなおさずそれはわたくし個人の地域精神医療の試みであった。断っておきたいが,わたくしの滞在は1年半という短期間であり,もっぱら精神科診療のみに従事したわけではない。むしろ一般診療の比重がずっと大きかったことを強調したい。一般診療の中に自然の形でとり入れられた精神科医療では,こうした精神科医療の処女地においてあらかじめ予想される一般の人,あるいは患者,家族の偏見や抵抗はより少なく,むしろ患者,家族もわたくしによる診療を他の疾病の診療と同じように自然に受け入れていった点で,有利に展開したといえる。
(診療所の待合室では,他科の患者さん達と一諸に精神科の患者さん達も談笑しながら待っていた)。全科的な診療を扱う中でいわゆる"村の先生"としてごく普段着の姿で村の人々に接し,ほとんどの村の人々と知り合いになることができたことは,とくに地域での精神科医療活動のために無形の力となっていることを知った。
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