巻頭言
精神障害者と福祉・労働
菅又 淳
1
1東京都立精神衛生センター
pp.754-755
発行日 1971年8月15日
Published Date 1971/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201781
- 有料閲覧
- 文献概要
精神障害者に対する偏見・差別,また精神科医療制度の不備と欠陥などについては最近強く指摘されていることであり,この巻頭言でも常にとり上げられている。またかと思うかも知れないが,わたしも別な面から精神障害者の福祉やリハビリテーションの面の隘路について痛感したことを述べてみたい。
精神障害者の福祉が全くなっていないとよくいわれる。心身障害者に関してはすでに法律が整備されていて(身体障害者福祉法,精神薄弱者福祉法,児童福祉法など),われわれの知らないような立派な保障がなされている。しかし精神障害者——とくに精神分裂病者に対してはほとんど何もない状況である。東京都において昨年秋から精神障害者の職親制度の試みをはじめ,その時に色々の関係法規について少し調べたり,教えてもらったりしたのであるが,精神病以外の障害者に対しては福祉関係ばかりでなく,労働関係の諸法でも,年金関係でも,大分手厚い保護が行なわれ,こちら(精神障害者)の入り込むすき間すらなくなっていることをまざまざと知らされたのである。自分の不勉強さをつくづく反省させられるわけであるが,精神障害者が他の障害者からいかに除外されているかを今更ながら感じさせられた。われわれ精神科医が余りに視野が狭く,この方面にいかに無関心であったかが痛感されるわけである。ここで精神障害者が何と蔑視され,偏見をもってみられているかと悲憤慷慨し,怒りをこめて世に訴えるというのが常道であるが,それだけでは精神科医の偏狭さを示すだけで,決して前進にはならない。
Copyright © 1971, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.