特集 中小企業の健康問題
中小企業と労働福祉—人手不足と労働時間短縮
鈴木 春男
1
Haruo SUZUKI
1
1千葉大学文学部
pp.436-440
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900125
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中小企業では経営不振に陥り,整理され消滅していく企業がある一方で,新しく設立され発生する企業も数多く存在している.そうした消滅と発生をめぐる淘汰がくりかえされるなかで,健全な経営が生き残り,全体としては経営の近代化がなされていくわけであるが,現在の中小企業にとって淘汰を促す重要な要因に人手不足の問題と時間短縮の問題がある.
内需拡大政策のなかで景気は好調であり,多くの中小企業が人手不足に悩んでいる.また,他方では,昭和63年4月に労働基準法が改正・施行され,労働時間短縮が社会的要請となっている.人手不足と時間短縮は,一見したところ相互に矛盾し,両立は不可能のように見える.確かに,人手不足の下では時間短縮などとても無理だという企業が多いし,また時間短縮を進めるには従業員の採用が不可欠だとする企業も多い.しかし,それを矛盾と考え,両立は不可能だと考えた企業の経営は破綻する恐れがあるといわなければならない.健全な経営がなされるためには,時間短縮を進めながら同時に人手が確保されていかなければならないのである.ここでは,現在問題となっている時間短縮と人手不足の実態を把握したうえで,両立させるためには何が必要かを考えてみたい.
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