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特集 心気症をめぐつて
第5回日本精神病理・精神療法学会大会シンポジウムより
主題演者
セネストパチーについて—長期観察例から
Cenestopathia: Longitudinal Study
小池 淳
1
,
工藤 義雄
2
Jun Koike
1
,
Yoshio Kudo
2
1小曽根病院
2大阪警察病院
1Ozone Hosp.
2Osaka Keisatsu Hosp.
pp.358-361
発行日 1969年5月15日
Published Date 1969/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201474
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I.まえがき
ヒポコンドリーを,身体に関する過度の病的関心であるとするならば,大半は神経症的構造を有する病者にみられるものである。すなわち,精神衰弱的素質の上に作りあげられた不安,病や死への恐れ,また強迫観念が,ヒポコンドリーの病理構造として考えられる。分裂病者,ときにはうつ病者においては,その自己身体に関する偏見は確信にまで強められ,妄想構造を形成するにいたる。すなわち心気妄想であり,否定妄想であり,つきもの妄想である。うつ病者の心気的訴えは,抑うつ感情が,その基本構造と考えられるのは周知のことである。
これから論ずるセネストパチーも,身体に関するある種の病的関心のありかたという意味で,ヒポコンドリーと称することができるが,前三者と異なり,病理構造として,不安あるいは恐れでもなく,明確な妄想でもなく,抑うつ感情でもない。またセネストパチーの臨床上の特徴としては,自己身体の異常をperceptionの異常として体験する点であろう。その訴えは奇妙で,われわれの追体験を許さない内容であるため,分裂病者の幻覚,あるいは妄想観念を思わせるのであるが,くわしく彼らの体験を語らせてみると,奇妙な表現は単なる比喩であることが多く,体験そのものは,初めて経験する,ありありとした実体的な感覚であり,表現するのがきわめて困難な感覚であることがわかる。
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