第7回精神医学懇話会 精神科診療所をめぐる諸問題
主題報告
夜間診療所の経験から
長坂 五朗
1
1浅香山病院
pp.12-18
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201425
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I.はじめに
ここ数年来,精神医療ということばが好んで用いられ,その代表的なものは,岡田靖雄編になる「精神医療」であろう。これには精神医療という概念の内包するすべてのものが盛りこまれたと見てよいかと思うが,このなかでは精神科診療所は出てこない。これに近いものはafter careの項で「外来」ということばであろう。わが国では,その存在があまりにも少ないため,少数の人が,精神科診療所(精神科検査所ではない)の必要性を主張しているにすぎない。このことは不毛のための未経験からする一つのair pocket的現象なのか,精神科診療所は不用と考えておられるのか,私には判らないところである。
経験科学である医学において,あまり経験を持たない(私自身も決して豊富な経験者ではない)精神科診療所の諸問題が,次元の高いこの懇話会に,どれほどの資料と理論を提供しうるか,私は立津教授の質問文の序文とは別に危懼するものであるが,精神科診療所の不毛,不問がむしろ重要な意義を持っていると考えられ,今回論ぜられることが,次元の低い,非科学的な,あまりにも現実的,通俗的内容のものであろうと,このテーマがとりあげられたこと自体に大きな意義をみとめるのであつて,抽象的な観念論にならないことを私は希望したい。
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