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研究と報告
逆転移と治療者のパーソナリティのとりあげかた—大学教室における精神療法スーパービジョンのなかで
Counter-transference and Personality of Therapist in the Course of Supervised Psychotherapy as a Psychiatric Training in University Hospital
小此木 啓吾
1
,
鈴木 寿治
2
Keigo Okonogi
1
,
Toshiharu Suzuki
2
1慶応大学医学部精神神経科教室
2武田病院
1Neuro-psychiatric Dept., Keio Univ., School of Med.
2Takeda Hospital
pp.789-795
発行日 1968年10月15日
Published Date 1968/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201391
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Ⅰ.まえがき
こんにちの精神医学の臨床教育にとつて,精神療法の適切な指導と学習が重要なのは論ずるまでもないが,いざ大学教室のなかでこれを実践しようとすれば,精神療法の特殊性に由来する数多くの困難に出会うことになる。われわれとしては,まずそれらの困難を明らかにし,その現実的解決に努力する一方,与えられた現実状況に即した教育方法を発展させねばならない1)2)。すなわち精神療法教育一般のなかで純粋なかたちで理想とされる治療者の教育と訓練3)を,大学教室では,どんなかたちで,どのような範囲について行なうのが適切かは,それぞれの教育関係の性質や,教育環境に応じて決定されねばならない。そして本報告は,このような配慮のもとにわれわれがこころみてきた大学教室における精神療法スーパービジョン(supervision)の初歩的段階の報告である。たとえば逆転移(countertransference)や治療者のパーソナリティをスーパービジョンで,どのようなかたちで,どんな程度にとりあげるかは,これらの教育関係や環境の現実状況ときわめて密接な関連をもち,スーパーバイジー(supervisee)の学習段階に適応したものでなければならない。ここでは,大学教室における精神療法スーパービジョンの一般的論議はべつの機会にゆずり,スーパービジョンの中心的課題となる逆転移とパーソナリティの問題をわれわれがどのようなかたちでとりあげたかについて,まだ初歩的段階にあつた具体的な1人の治療者の治療関係について報告したいと思う。
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