Japanese
English
研究と報告
もうろう状態の発作を伴える膵ラ氏島腺腫例—側頭葉てんかんとの比較について
A Case of Islet Cell Adenoma of Pancreas with Fits of Twilight State: compared with Temporal Lobe Epilepsy
田中 稜一
1
,
田中 章二
1
,
長野 俊光
1
R. Tanaka
1
,
S. Tanaka
1
,
T. Nagano
1
1札幌医科大学神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsych., Sapporo Medical College
pp.663-667
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201052
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.まえがき
内因性低血糖症の臨床症状は,1910年にウィーンにおいて,Porgesがaddison氏病にみられたのを発表したのが最初といわれる。一方1922年Banting & Bestのインシュリン発見により,インシュリンの過量投与による低血糖症状が注目されるにいたつたが,1924年Harrisは他からインシュリンを投与しないでも同様な症状をていする5症例を報告し,以来この疾患に自発性低血糖症なる名称が付せられるようになつた。同じく1924年Wileerは,自発性低血糖症患者の膵Langerhans氏島癌組織および肝臓に転移せる病巣組織より,インシュリンを抽出し,本症が内因性の過剰分泌によつて起こる場合もあることが判明した。わが国では,1933年,三宅が剖検例で器質性インシュリン症を発表したのが最初のもので,以後,同様症例の報告例は,わが国においても30例近くなされている。本症は,発作性に生じる異常行動を伴つた意識混濁やけいれん発作を主症状とし,非発作時にはほとんど臨床所見がないため,てんかんと誤まれる場合が多々あるが,われわれも数年にわたりてんかんの精神運動発作と誤診せられた膵ラ氏島腺腫の1例を経験したので報告するとともに,なぜこのような誤診をするのか,文献的にも検討してみた。
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.