特集 学際的分野での理学療法士の研究活動
理学療法における行動科学的接近
辻下 守弘
1
,
小林 和彦
2
Tsujishita Morihiro
1
1広島県立保健福祉短期大学理学療法学科
2筑波技術短期大学理学療法学科
pp.345-348
発行日 1999年5月15日
Published Date 1999/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105309
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1.はじめに
臨床現場は,解決困難な問題で溢れている.痛みの原因が除去されているにもかかわらず痛みを訴える患者,行えば効果があると理解しながらも指導した訓練が継続できない患者,医学的に説明のつかない運動障害など,挙げれば切りがないほどの事例に遭遇する.脳卒中や心筋梗塞など慢性疾患を持つ患者の多くは,このような医学的アプローチだけでは解決困難な心理社会的な問題を抱えており,これはもはや医療の常識であるといっても過言ではない.
理学療法士は,急増する慢性疾患のケアを担う中心的な存在であり,今後社会のニーズもますます大きくなるであろう.しかし,理学療法士がその期待に応えるためには,医学の呪縛から逃れ,学際的なアプローチを取り入れるべきであり,行動科学はその有力な手段となるであろう.米国では行動科学の重要性が早くから認知され,すでに医療従事者教育の必須科目として導入されているだけでなく,1970年代には医師や看護婦の国家試験科目にも含められている.そこで本稿では,行動科学の概要を紹介し,理学療法でどのように応用され,研究されて行くべきなのかを解説する.
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