Japanese
English
研究と報告
Tofranil定式療法による抑うつ患者の治療について
Über die Behandlung von depressiv Erkrankten mit der "systematischen Tofranil-Kur"
木村 敏
1,2
,
石田 千鶴子
1,2
,
河合 逸雄
1,2
B. Kimura
1,2
,
Ch. Ishida
1,2
,
I. Kawai
1,2
1滋賀里病院
2京都大学医学部精神医学教室
1Shigasato Hospital
2Psychiatrischen und Nervenklinik der Universität Kyoto
pp.805-809
発行日 1965年9月15日
Published Date 1965/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200901
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I.序論
Iminodibenzyl誘導体Imipramin(Tofranil)は1957年R. Kuhn2)によりその特徴的な抗うつ作用を確認され,わが国にも1959年に導入されて以来,われわれにとつて不可欠の薬品となつている。ただ本剤のすぐれた抗うつ作用に関しては諸家の一致して認めるところであるにもかかわらず,本剤によつてうつ病の何パーセントが治癒せしめうるかに関しては,諸報告の問にかなりの差が認められる(第1表)。この表からただちに眼につくことは,本剤のわが国における有効率が諸外国のそれに比していちじるしく低いことである。わが国における最高値(神岡らの44%)をとつてみても,外国における最低値(Azima et Vispoの56%)におよばない。この現象は単に数値のうえだけでなく,著者らの1人木村がドイツ滞在中に実際に体験した事実とも一致する。そこに当然存しなければならぬ原因の考察は,われわれのTofranil使用法に対するいくつかの反省を必然的に導いてくれた。
第1に,Tofranilのみならず広く向精神薬一般について考えらるべきことであるが,われわれは精神疾患にある化学物質を投与するさい,従来ともすれば,その疾患があたかもその物質の欠乏に基因しているかのごとき,すなわちビタミン欠乏患者にビタミンを投与するかのごとき,画一的な分服法を用いてきたのではないか,精神薬剤の投与ということがいかなる意味をもつものかという当然なさるべき反省が,はたしてなされてきたかということである。
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