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昨年の春以来,ライシャワー事件を契機として表面化した精神衛生法改正の問題は,これまで幾度かこの欄で紹介してきたように,いろいろの経緯を経て今年1月14日に精神衛生審議会の第2次答申の提出によつて一応の審議を終つたかたちとなつたが,問題が複雑多岐にわたり,いかにもその審議に十分な日時をついやすことができなかつた憾みもあり,なお審議をおえていない事項については,ひきつづき審議を行ない,後日意見を答申する旨,付言された。われわれ精神科医としては答印された事項にもその他にも審議不十分の点があるにせよ,重要な点についてはほぼつくされているし,これがかなりのところまで政府原案に盛りこまれることを期待した。ところが,国会の会期のあとに参議院選挙をひかえていることや,他の法案の山積していることなどによつて,原案の政府部門での承認を受けるまでの日時が少なかつたこともあろうが,答申に盛られた重要骨格はほとんど無視されたかたちの法案に堕してしまつた。われわれとしては所管の公衆衛生局の当事者がどれだけ答申の意のあるところを理解し,また他局,他省,法制局に対する折衝に,どれだけの熱意と説得力をもつていたのかを疑わざるをえない感をもつた。
ともあれ,予算に関係のある第1次答申のなかからは,精神衛生相談所に代わつて精神衛生センターが,設置することができる,というかたちで一応実現し,現場業務は保健所がこれにあたるかたちができた。また措置入院以外の医療費補助としては予算で認められたように,ようやく外来医療の負担額2分の1が条文化(第32条)されたが,これの審査のため,結核予防法にあるような精神衛生診査協議会が各県に設けられることになつた。肝心の入院治療費がぬけているため,どれだけの効果が発揮できるか,いたずらに煩雑なことになるとの非難があるかもしれないが,これはつぎの段階への橋頭堡と考えていただきたい。
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