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I.まえがき
向精神薬の進歩はめざましく,続々と薬物が発見され,使用されているが,そのなかで現在使用されている抗うつ剤は2群に大別することができる。一つはフェノチアジン系化合物に類似した構造をもつimipramine,amitriptyline,chlorprothixeneなど一連の薬物で,もう一つの種類はモノアミンオキシダーゼ酸化酵素阻害剤でiproniazid,pheniprazine,isocarboxazide,nialamide,phenelzineなどの薬物である。この薬物は生化学的性質が明らかで向精神作用のうえで興味がもてるのであるが肝障害の危険性があるため,現在その使用は少なくなり,フェノチアジン系化合物に類似の系統が,多く使用されるようになつている。ここに報告するdesmethylimipramineもそれで,化学名は5-(-methylamino-propyl)-iminodibenezyl-hydrochloridである。構造式は第1図のとおりである。それから明らかなようにiminodibenezylの誘導体でありimipramineの側鎖のメチル基(CH3)がHになつたものである。
Desmethylimipramineは1959年imipramineの代謝産物としてHerrmann, B. ら1)によつて同定された。薬理学的研究ではimipramineと類似した結果が認められたところから母体物質であるimipramineの抗うつ作用も脳内においてその活性代謝産物desmethylimipramineにより発揮されるのではないかと考えられた。しかしimipramineの抗うつ作用がすべてその代謝産物の結果であるとする説は現在まだ仮説の域を出ていないようである。
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